年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
パイロットになってからの彼が、こんなふうに無邪気に笑う姿を見るのは、ほとんど初めてだ。
私の知る限り、仕事中の彼はいつも冷静で、必要以上に感情を表に出すことはなかった。
厳格とまではいかなくても、どこか隙のない振る舞いをしていた。
だからこそ、今の彼の柔らかな表情には、あの研修時代の面影が重なって見えて、私はかえって戸惑ってしまう。
「そうですよね……」
次の話題を探そうとするものの、うまく見つからない。仕方なく、曖昧に微笑んでごまかす。
「というか、若林さんのほうが方が年上ですよ。敬語はやめてください。昔は容赦なかったじゃないですか」
どこか懐かしむような声音に、遠い記憶がふっと蘇る。
かつては確かに彼を指導する立場だった。
私自身、まだ自分のことで精一杯だったあのころ、余裕のなさを悟られまいと必死で、甘やかすどころか厳しく接していた。