年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
木村征爾機長。LATのパイロットで、鷹野君の先輩にあたる。小さいころから征爾君の家と我が家は懇意にしており、私にとっては兄のような存在で、父の娘だということを知っている数少ない人物のひとり。とはいえ、今回の取材とは関係ないはずだ。
父はその場にいたスタッフたちに向き直り、当然のように言った。
「木村機長にも指導という形で加わってもらうことにした。経験もあり、判断力も信頼できる人物だ。若手のフォローもお願いできるだろう」
その口調に、現場を預かる人間たちへの配慮など微塵も感じられない。すべては自分の判断が最善だと言わんばかりの物言いだった。芽衣を含めた周囲の人たちの動揺を見ると、勝手に個人的に頼んだことは明らかだ。
私は心の中で、静かに息を詰めた。
鷹野君が今回の対談のために、忙しいスケジュールを縫って協力してくれたことを父は知っているはずだ。それでも、あえて彼を「指
導が必要な若手」と位置づけるようなこのやり方。
征爾君を信頼しているのはわかる。確かに彼は立派な人だ。でも……これはあまりにも失礼だ。
まるで、鷹野君ひとりでは不足だと言わんばかりじゃないか――。