年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「望海、お前、きちんと鷹野君とは話をしたんだろうな?」

低く響く声に、思わず足が止まりそうになる。

「身体でもなんでも使って、今日の見合いを成功させるように言ってあったはずだ。社長の前で彼が断るようなことがあったら、ただじゃすまないぞ」
この短期間で、そんなことが本気でできるとでも思っているのだろうか。

それに――私はむしろ、彼に断ってほしいと伝えてしまった。しかし、いまさら父になにを言っても、火に油を注ぐだけだ。無言のまま、私はただ歩を進めた。

見合いの場に指定されたのは、LATグループ系列の五つ星ホテル「ホテル・ルミエール東京」。その十七階にある料亭「雅(みやび)」だという話を聞いたとき、私は一瞬耳を疑った。このホテルの名前は、何度か父が自慢げに口にしていたのを覚えている。

グループ系列の中でも特に格式が高く、選ばれた人だけが出入りできる特別な空間だ。沙羅は何度か行ったことがあるかもしれないが、私はもちろん連れて行ってもらったことはない。
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