年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「ああ、もちろん」
満面の笑みを浮かべた父を横目に、私はなんとも言えない気まずさを覚えながら、そっと視線を落とす。
「じゃあ、車を用意させるので、どうぞお先に」
奥様が柔らかい笑みをたたえながらそう告げると、まるで待っていたかのような絶妙なタイミングで、先ほど私たちを案内してくれた女性が現れた。
「若林社長、こちらへどうぞ」
その声に促され、父は「では、社長、これからよろしくお願いしますな!」と豪快に笑い、上機嫌のまま部屋を出て行く。
父の姿が見えなくなった瞬間、それまで張り詰めていた空気がわずかに緩み、静寂が降りた。私はすぐに座布団から降り、できる限り深く頭を下げる。
「度重なる父の無礼をお許しください」
精一杯の謝罪だったが、それでも自分の声がわずかに震えているのがわかった。あんな父の振る舞いを止めることもできず、ただ見ていることしかできなかった自分が情けなく、申し訳なさで胸が押しつぶされそうだった。