魔法のマーメイドクラブ

2、空飛ぶマーメイド

「ゲーッ! サイアク! 俺、センセーの目の前じゃん」
「ウチ、五番だったよ。やった、今度は近いね!」

 四角い箱の中から紙を選んで、それぞれが黒板の数字を確認する。
 五年生になって、初めての席替え。先生がランダムに書いた番号に、一喜一憂するクラスメイトたち。
 ギーギーと机を動かす音が響く中、わたしは緊張しながら紙を開いた。

 十三番。今の席から、ひとつ左へずれるだけ。
 となりの二十番は、誰だろう。クラスの子とはあまり話さないから、誰でも変わらないんだけど。
 もしも、神様がいるなら……。


「ラッキー! アクアちゃんのとなりだ」

 廊下側から、りっちゃんの声がした。そのとなりに、ちょこんと座っているアクアちゃんが見える。

「あいさつの時から、ずっと可愛いーって思ってたんだ! アクアちゃんと仲良くなりたいって」

 目をキラキラさせながら、りっちゃんが声を弾ませている。
 他にもなにか話しているようだけど、移動するクラスメイトに隠れちゃった。
 この前は、あれほど悪口を言っていたのに。りっちゃんの変わりようにモヤっとしつつ、イスに座る。
 ……いいなぁ。アクアちゃんのとなり。

 がっかりしていると、目の先にガタンと机が置かれた。
 顔を上げて、ドキッとする。
 チラッと目があったのが、霧谷くんだったから。

「……花池さんか。よかった」

 ボソッと聞こえた言葉に、頭がパニックになる。
 よかったって、どうゆう意味だろう?
 きっと、深い理由なんてないよ。
 大人しくて、話さなくても平気な人だってことだよね。

 ぐるぐると考えながら、もう一度横に視線を送る。
 となりの席になれるなんて、思わなかった。話せるパワーを与えられたわけじゃないから、なにも変わらないんだけど。
 運の神様は、ほんとにいるみたい。
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