魔法のマーメイドクラブ
 今日の水泳の授業は、見学した。
 かぜ気味だと言ったら、お母さんがプールカードにそう書いてくれた。
 この前の授業で溺れかけてから、さらに水が怖くなったの。自分だけ別のところで練習しなくちゃいけないのも、イヤだったから。仮病で逃げてしまった。

 太陽で熱くなったプールサイド。みんなが頑張っている姿を見ていると、チクチクと胸が痛む。
 ひとつ離れた場所で、アクアちゃんも体育座りをしている。

「もしかして、アクアちゃんもサボり? 男子の前で水着着るの、やだよね」
「アクアは入りたくても入れないんダヨ〜。おばさんに、学校ではダメって言われてるの」
「なんでぇ?」
「ワカンナーイ!」

 話しかけたいけど、わたしとの間にはりっちゃんがいる。
 壁を作るみたいに、がっちり横を向いて、顔が見えないようにされている。
 ボーッとプールを眺めていたら、霧谷くんがクロールを終えてプールサイドへ上がった。
 泳ぎも速いし、帽子を取って髪をくしゃってする仕草もカッコいい。

 でも、気づいちゃったの。向こう側を歩きながら、チラッと視線を送っていたこと。
 その先には、アクアちゃんがいて、気にしている感じだった。

 もしかしたら、霧谷くんはアクアちゃんのこと……。
 やだやだと頭の想像を消して、足の間に顔を伏せる。


「……いたい」

 水泳の時間が終わる頃になって、ほんとうにお腹の調子が悪くなった。
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