魔法のマーメイドクラブ

4、七夕の願いと小さなウソ

「アクア、時間を戻せる魔法グッズってないの?」
「……ナイ!」
「さすがに、ローナ・リッチの世界にはなれないか」
「ローナ? リッチ? それ食べられる?」
「前も説明した気がするけど、ファンタジー児童文学だよ。ここ数年ですごく人気出てきて、俺が最初に面白いって気づいてたのに、正直複雑なんだけどさ……」

 アクアちゃんがウンウンと聞いている横で、私はそわそわと落ち着かないでいる。
 秘密基地がなくなっちゃったから、しばらく波木さんの家を借りることになった。アクアちゃんの部屋に集まったんだけど、机の上に置かれた紙の前で固まっている。

「あれ、ミイまだ書いてないの?」
「ほんとダ! ミイちゃん、早く早く! なんでもイイヨ。ワクワク♪」
「う、うん……二人とも、すごいね。もう決まったんだ」

 今日は七月七日。七夕の願いごとを書いて、笹に飾ることになったの。
 でも、二人に知られるのが恥ずかしくて、ペンを握ったままなかなか書けない。変に思われないか心配。
 さっそく、アクアちゃんとカナトくんが笹に短冊をつけていく。

『チームアクアで一日中お菓子の家を食べてタイ!』

『石と秘密基地の復活(できれば魔法を操りたい)』

 それぞれの願いごとを見て、ほっぺがフニャンとなる。
 そうだった。手の届かない望みだからなんて、関係ない。
 アクアちゃんとカナトくんの前では、ありのままのわたしでいいんだ。
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