魔法のマーメイドクラブ
 翌日の朝。五年三組の教室へ入ると、りっちゃんが廊下側の席に一人で座っていた。
 その横をマナちゃんが通りすぎるけど、おはようのあいさつはない。
 あれ? という違和感がわくけど、わたしはいつものように黙ってイスを引いた。

「絶対、りっちゃんだよ。おととい、用事あるからって一人で帰ったもん」

 他の子とコソコソ話している声が聞こえてくる。

「物壊すとか、いくらなんでもやりすぎだよね。さすがに引いちゃった。怖すぎ〜」

 りっちゃんの方を見ながら、クスクスと笑い合っている。
 会話の内容から、秘密基地が壊されていたことについてだとわかった。
 もう、りっちゃんとしゃべるのやめよう。マナちゃんたちは、そんなことを言いながら教室を出て行った。

 そういえば、あの日、秘密基地の近くでりっちゃんを見かけた。遠目だったし、はっきり顔を見たわけじゃないけど。
 もしかして、帰り道にあとをつけて、りっちゃんが……?

 そのとき、りっちゃんと目が合った。気まずいと思うより先に、りっちゃんがプイッとそっぽを向く。
 たぶん、さっきの会話も聞こえていたはず。
 わたしは、どうしたらよかったんだろう。黙って立っていることしかできない。

「行ってないし」

 そんなセリフが、ボソッと聞こえた気がした。
 本当のことはわからない。ただ、秘密基地が壊されたことだけは真実。
 この日を境に、りっちゃんはマナちゃんから無視されるようになった。
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