魔法のマーメイドクラブ
 土曜日の朝。毎週の日課であるテレビアニメを見終えて、うーんと背伸びをする。
 小一の妹が好きな変身ヒロインアニメ。人魚の女の子が主人公で、困っている人たちを助ける物語。
 なんとなく一緒に見ているうちに、わたしの方が真剣になっていた。
 わたしと近い年の女の子たちが、頑張って敵に向かっていくところがかっこいいの。

 天気がいいから庭へ出て、花に水やりをする。
 小さいころは、カワイイなぁって見ていたけど、今はうらやましいって思う。

 ずば抜けてスタイルがいいとか、勉強ができるとか。クロールが泳げるとか……わたしにも、なにかとりえがあったらいいのに。

 反対の手で、首の横をそっと触る。
 昔から付け根のあたりにアザがあって、ちょっとしたコンプレックスなの。まるで魚のウロコみたいな模様だし、誰にも見られたくない。

 天は二物を与えずってよく言うけど、こんなのはいらないよ。

 水のシャワーを降らせていたら、ふわふわゆらゆらとちょうちょが飛んできた。

 昨日、橋の前で見たクリオネだ!

 あわてて水道を止める。こっちへ来てと誘うように、クリオネは道路へ向かっていく。

「待って!」
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