魔法のマーメイドクラブ
 怒らせちゃったみたい。
 でも、やっと一人で帰れる。

 ホッとしたとき、ひらひらと白っぽいなにかが飛んできた。りっちゃんの顔を横切ったけど、気づいていないみたい。
 ちょうちょほどの大きさ。半分透明で、とっても可愛い。
 わたしの目の前で止まって、ふわふわと羽を広げている。

 クリオネ──ううん、クリオネは海の生き物だから、こんなところにいるわけない。
 でも、すごく似ているの。そっと触ろうとしても、逃げない。

 わたしのまわりをくるくる踊って、バイバイと手を振るように遠くへ飛んで行った。


「なんだったんだろう」

 つられて手を振りかえして、車の人に変な目で見られた。
 急に恥ずかしくなって、橋を早足で渡っていく。

 もう、バカバカ。さっきの人、自分にバイバイしたのかと思って、目を丸くしてたよね。知らない人だったから、よかったけど。
 そのときの光景を思い出して、プッと吐き出す。
 わたし、すごく変な人だ。

 気分の落ちる帰り時間だったのが、いつのまにか、ほんわかした気持ちに変わっていた。
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