魔法のマーメイドクラブ
 学校の帰り道。首にもらったチョーカーをつけて、波木さんの家を訪ねた。アクアちゃんは、ちょうど身支度をして、自分の家へ帰ろうとしているところだったの。

「……どうして、ミイちゃん、覚えてルノ?」

 びっくりした目をして、アクアちゃんはボテンとリュックを落とした。
 キラリと光るわたしのうろこ模様を見て、なんとなく納得したみたい。呪いのせいで、わたしだけ記憶を改ざんできなかったこと。

「ひどいよ。なにも言わずに行っちゃうなんて。みんなの記憶から、存在消しちゃうなんて」
「アクアね、見つけちゃったンダ」
「え?」
「運命の人。だから、帰らなくちゃいけないノ」

 ごめんネと大きなリュックを拾って、アクアちゃんが貝殻ポーチを首にかける。

「それから、魔法は、もう使わないって決めたンダ。あんなコトになるなんて、思わなかっタ」

 後悔している顔。みんなと仲良くなろうとしたことも、魔法で危険な思いをさせたことも、ぜんぶ。

「ダメだよ……あんなに、上手くなりたいって頑張ってたのに。あきらめちゃうなんて。わたしは、アクアちゃんとの魔法クラブ楽しかった! すごく、大好きだった。アクアちゃんに、いっぱい救われたから」

 一人ぼっちだったとき、アクアちゃんがいてくれたから学校がイヤじゃなかった。
 カナトくんと三人で空を飛んで、泳ぐ練習をして。動物とお話ししたり、好きな味に変えてアイスを食べたり。
 たくさんのことを思い出したら、涙があふれてきた。

「ミイちゃん、泣かないデ。アクアも、悲しくナル」

 ワンワンと声をあげながら、アクアちゃんも一緒に泣きだす。
 ほんとは、アクアちゃんも寂しいんだ。約束って言ってたけど、決まりだからで、アクアちゃんの意志じゃなかった。

「アクア、そろそろ時間よ」
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