魔法のマーメイドクラブ
 海がプールへ戻ったあと、黄金の光が消えたらアクアちゃんの姿はなくなっていた。
 どうして集まったのか、みんな覚えていなくて、とりあえず解散することになったの。
 さっきまでの出来事はもちろん、アクアちゃんのことさえ、忘れてしまっていた。

 きっと、アクアちゃんのしわざ。カナトくんの言っていた【結末】っていうのが、これだったんだろうなって。

 いつのまにか、首のアザもなくなっていた。
 それから、もうひとつ思い出したことがあるの。
 五歳のとき、海で溺れたときのこと。わたしは神様に助けられて、しばらくの間、別の世界にいた。
 地球とは違う、知らない場所。不思議な光につつまれているところ。


『あのね、お願いがあるの。この世界ですごしたことは、だれにも話しちゃだめだよ。
 貝殻のベッドや、サンゴの友だち。光るうろこも、全部ヒミツ。

 だれかに知られたら、わたしは消えちゃうの。
 もしも、忘れちゃったら……いつか思い出せるように、その(シルシ)を残しておくね』


 あのアザは呪いじゃなくて、わたしの記憶がしまわれている場所だったのかもしれない。
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