魔法のマーメイドクラブ
『美波ちゃんも、アクアちゃんみたいな子、あんま好きじゃないよね?』

 りっちゃんの言葉を思い出して、不安になる。
 もしも、わたしがアクアちゃんと仲良くなったら、なにか思われるかな。不機嫌になって、また悪口を言われるかもしれない。


「見てみて、これってすごい?」

 そんなことを考えていたら、アクアちゃんが道路に生えている雑草を指さした。

 ただの草だけど、なにがすごいの?

 首をかしげながら見ていると、小さなつぼみがパッと開いた。

「あっ、花が!」

 もっと近づいて、今度はしっかり目を見開いてもう一度見る。
 パッ、パッと、次々に小さな青い花が咲いていく。まるで、魔法の呪文をとなえたみたいに。

「なんで? どうなってるの?」

 いつもはこんなふうに、声を張り上げたりしないけど。胸がドキドキして止まらない。

「ミイちゃん、誰にも言わない?」

 うんうんと深くうなずいて、手まねきするアクアちゃんにそっと顔を寄せた。

「実はアクアね、魔法使いなの〜」
「……ええ⁉︎」

 花とアクアちゃんを交互に見て、変な声が出る。

「なーんてね。冗談ダヨッ♪」

 テヘッとおちゃめな顔で、アクアちゃんが笑う。


「なんだ、ちょっと信じちゃった」

 魔法使いなんて、絵本や映画に出てくる空想の人。現実にいるわけがないよね。
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