魔法のマーメイドクラブ
 魔法使いなんて、絵本や映画に出てくる空想の人。現実にいるわけがないよね。
 ふわふわと、クリオネみたいな生き物が現れた。ちょうちょみたいに、青い花の上へ止まる。

「この子、なんて虫かわかる?」

 思わず聞いちゃったけど、アクアちゃんは黙っていた。
 クリオネを見守るような優しい顔で、見つめている。

 わたしも、同じようにじっとした。
 やっぱり変だ。花が咲いたのは、真ん中のところだけ。他は雑草のまま。こんなの、普通じゃないよね?

「クレオパトラ。略してパトラ、ダヨ〜」
「なんのこと?」
「ほら、この子のナマエッ♪」

 ツンツンと触っているのは、半透明の不思議な生き物。

「……あ、クリオネ!」

 自分が聞いたのに、今さらだ。
 でも、このカワイイ生き物には、ちゃんと名前があったらしい。
 クレオパトラって、古代エジプトの王女様だっけ?

「パトラは、アクアの分身なの。一番の友だちナンダッ」
「分身? 友だち?」

 目をパチクリとさせたら、目の前で飛んでいるクリオネ──パトラから鳴き声がした。

 ピーピーと可愛らしい音がする。なんて話しているんだろう。

 そのとき、アクアちゃんがポケットからイヤホンを取り出した。
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