キスはボルドーに染めて
 蒼生が正面のロック画面にキーをタッチすると、豪勢な両開きの自動扉が開く。

「私が住むマンションとは大違いです」

 陽菜美はやや気後れしながら奥へと進むと、蒼生の後に続くように、到着したエレベーターに乗り込んだ。

 その途端、振り返った蒼生に力いっぱい抱きすくめられる。


「きゃ……」

 小さく悲鳴を上げた陽菜美を愛しそうに見つめると、蒼生は今までの何倍も甘いキスを降りそそいだ。

「ごめん、ちょっと余裕ないな」

 蒼生はじりじりと陽菜美を壁際に押し付けると、深く深く唇を重ねる。

 こんなに切羽詰まった蒼生の顔は初めてだ。

 陽菜美は何度も吐息を零しながら、蒼生のキスに溺れそうになる。

 でもうっすらと瞼を開けた目線の先に、エレベーターのランプが映り、陽菜美は慌てて下を向いた。


「あ、蒼生さん、ここエレベーターです」

 陽菜美の声に蒼生はぴたりと止まると、はぁと大きくため息をつく。

「陽菜美はさっきから、そればっかりだな」
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