キスはボルドーに染めて
 コーヒーカップをテーブルに置いた蒼生は、そっと腕をのばすと、陽菜美の両手を包み込むように優しく握った。

「陽菜美には感謝してるんだ。俺は陽菜美のおかげで変わることができた。プレゼンを成功できたのも、OTOWineで働き続けたいと思えたのも、すべて陽菜美のおかげだ。本当にありがとう」

 蒼生の真っすぐな瞳に、陽菜美ははにかむように何度も首を振る。

「私だって、蒼生さんのおかげで変われたんです。顔を上げて、前に進むことができた。蒼生さんが、私を救ってくれたんです」

 陽菜美はそう言うと、蒼生の手をぎゅっと握り返した。


「陽菜美……俺は」

 しばらくして、蒼生が静かに口を開く。

 陽菜美が見上げると、蒼生は何か考えごとをするように、目線を窓の外に向けていた。

「蒼生さん?」

 陽菜美が首を傾げると、蒼生は真っすぐな瞳を再び陽菜美に向ける。


「次は俺が解決する番だ。俺自身の問題を……」

 蒼生の静かだが重い声に、陽菜美は小さく目を開いた。

「それって、もしかして……三年前のことですか……?」

 やや遠慮がちに出した陽菜美の声に、蒼生がはっと息を飲む。
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