キスはボルドーに染めて
 女性が呼びかけると、男の子はタタタと駆け寄って来て、お行儀よくソファに腰かけた。

 男の子は二歳くらいだろうか。

 白いポロシャツに紺色のニット生地のベストを着て、蝶ネクタイまで着けておすましする姿は、子供ながらに立派だ。


「あの……」

 陽菜美が上目遣いでそっと目線を上げた時、女性は可愛らしく慌てた様子で立ち上がった。

「ごめんなさい。すっかり名乗るのを忘れてました。私、音羽 純玲(おとわ すみれ)といいます。蒼生さんの兄、音羽 一輝(おとわ かずき)の妻です。この子は息子の結翔(ゆいと)といいます」
 
 純玲(すみれ)がそっと男の子の肩に手を添えると、男の子はにっこりと可愛らしい笑顔を見せる。

「しばらく海外にいたのですが、こちらに戻る用があったもので」

 にこやかにほほ笑む純玲に、陽菜美は慌てて深々と頭を下げる。

「蒼生さんのお義姉(ねえ)さまだったんですね。大変失礼いたしました。私は蒼生さんの秘書をしています、結城陽菜美と申します。受付から、蒼生さんのお身内の方とは聞いていたのですが……」

 顔を上げた陽菜美は、突然目の前に純玲の可愛らしい顔が覗き込んでドキッとする。
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