キスはボルドーに染めて
「美智世社長を想像したんでしょう?」

「えっ、いえ、そんなことは……」

 慌てた陽菜美の顔を見て、純玲はふふふと笑い声を出した。

「良いのよ、気にしなくて。だって、美智世社長って怖いんですもの」

 おどけたように頬を膨らませる純玲の姿に、陽菜美は思わずぷっと吹き出してしまう。


 ――お義姉さんって、とっても可愛らしい方だな。


 陽菜美が笑いながらそんなことを思っていると、純玲が再び顔を覗き込ませてきた。


「ねぇ、秘書さんなら知っているかしら? どうも蒼生さんに“いいひと”がいるらしいのよね。どこのどなたかご存じ?」

 小さく首を傾げる純玲に、陽菜美は顔を真っ赤にすると慌てて下を向く。

「えぇっと……それはその……」

 陽菜美は動揺しながら、どう答えたら良いものかと思考を巡らせた。

 純玲は音羽の人間だ。

 もしかしたら蒼生の両親から、調べてくるように頼まれたのかも知れない。

 戸惑う陽菜美に、純玲はさらにグイっと顔を寄せた。

 純玲のクリクリの瞳に見つめられ、陽菜美はついに観念したように口を開く。
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