キスはボルドーに染めて
「ママ、どうちたの……?」

 結翔がもう一度、泣きそうな顔で声を出した時、純玲はやっと隣を振り向くと、結翔の頭をゆっくりと撫でた。


「ねぇ? この子、蒼生によく似てるでしょう? 特に笑った時の顔が、そっくりなのよね」

 唐突に話し始めた純玲に、陽菜美は戸惑ったように顔を上げる。

 確かに蒼生の実の兄の子であれば、多少なりとも似ているとは言えるのかも知れない。


 ――でもそんな事、わざわざ今言う必要がある……? それも蒼生さんを呼び捨てにして……。


 陽菜美の心の中にモヤモヤと嫌な感情が浮かんでくる。

 いくら親族とはいえ、義理の姉がなぜそんなことを言いだすのだろう。

 心の中に黒い(もや)がかかりそうになり、陽菜美は慌てて大きく首を振った。


「あ、あの、お茶をお持ちしますので、少々お待ちください。結翔くんはジュースがいいかな?」

 陽菜美はわざと、純玲の発言を気にしなかったふりをして口を開く。

「うん! ジュース!」

 結翔の元気な声を聞きながら陽菜美が部屋を出ようとした時、おもむろに振り返った純玲が陽菜美を呼び止めた。
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