キスはボルドーに染めて
 陽菜美はうつろな顔を上げると、すがりつく様な気持ちで窓際に目線を添わせる。


 ――せめて、あの鉢植えを……。


 そう思った陽菜美は、何度か窓際を目でなぞった後、慌てて鉢植えのある場所へ駆け寄った。

「え……?」

 陽菜美は声を漏らすと、焦ったように辺りを見渡す。

 何度見まわしても、あの鉢植えが見当たらないのだ。


「どうしたの?」

 陽菜美の様子に気がついた杉橋が駆け寄ってくる。

「あの、鉢植えがないんです。いつも窓際に置いてあって……」

「え? あの結構重そうなやつ?」

「そうです。今まで掃除でも移動されたことはなかったのに……」

 陽菜美は動揺したように両手をこめかみに当てると、必死に昨日の記憶を辿った。


 昨日、結翔が触って落としそうになった鉢植えは、あの後ちゃんといつもの場所へ置いたはずだ。

 あんな大きなものが、見つからないはずがない。

 陽菜美が杉橋と一緒に床や棚の上を探していると、突然バンッと大きな音を立てて入り口の扉が開いた。
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