キスはボルドーに染めて
「縛り付ける……?」

「そう。私は一輝と結婚してからもずっと待っていた。いつか蒼生が私を奪いに来てくれるんじゃないかって……。でも蒼生は来なかった。そして三年前のあの日、蒼生に拒否されてやっと気がついた。蒼生は私との別れを受け入れていたんだって」

 純玲はそう言うと、急に自嘲するように肩を揺らして笑い出した。


「だから嘘をついたのよ。蒼生は優しいもの。私が襲われたと知れば、きっと一生責任を感じてくれる。私はずっと、蒼生の心の中に居座ることができる。そして実際、そうなった……」

 薄く口元を引き上げる純玲に、美智世が憐れむように首を振る。

「なんてことなの……」

 その声を聞きながら、陽菜美は改めて純玲の恐ろしさを感じていた。


 ――純玲さんは、一輝さんと結婚してもなお、蒼生さんに執着していた。それは明らかに歪んだ愛情……。


 純玲の深い念に、陽菜美がブルッと肩を震わせた時、純玲がキッと陽菜美を睨みつける。

「でも、あなたが現れた」

「え……」

「蒼生に恋人ができたという噂を耳にした時、初めはいつもの遊びだと思っていたわ。蒼生は私と別れて以降、特定の女性をもたなかったから。でも、今回は違った……」

 純玲は憎々し気に陽菜美を見つめた。
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