キスはボルドーに染めて
 わたわたと慌てる陽菜美をさらにきつく抱きしめると、蒼生は陽菜美のおでこにキスをした。

「陽菜美は、はちゃめちゃだからな」

 唇を当てながら再び肩を揺らす蒼生に、陽菜美もつられるようにくすくすと笑い声を立てる。


 しばらくして蒼生は陽菜美に向き直ると、陽菜美の両手を取り、力を込めて握った。

「前に、俺の問題が解決したら、陽菜美に話したいことがあると言っていたのを覚えているか?」

 蒼生の声に陽菜美は「あ……」と小さく声を出す。

 そう言えば、初めて蒼生と結ばれた日、蒼生はそう言って真剣な瞳を覗き込ませていたはずだ。


「覚えています」

 陽菜美がうなずくと、蒼生は静かにほほ笑んだ。

「陽菜美に出会って初めて気がついたんだ。俺は今まで本気で人に恋したことがなかったんだって……。だからこそ、俺にとって陽菜美は、最初で最後の特別な人なんだ」

「蒼生さん……」

 二人は手を取り合ったまま、じっとお互いを見つめ合う。
< 219 / 230 >

この作品をシェア

pagetop