キスはボルドーに染めて
「杉橋さん! 鉢植えの水やりだけお願いします!」

 陽菜美はそう言うと、窓際で大きく葉を広げている鉢植えを指さす。

「了解! 任せといて」

 ガッツポーズをする杉橋に笑顔を見せると、陽菜美はすぐに蒼生を追って駆けだした。


 鉢が割られ、一時はもうだめかと思われたあの幹は、その後ちゃんと復活して、今は立派な葉を何枚も広げている。

 そしてその葉は、陽菜美の予想通り、やはり葡萄の葉だったのだ。


「山葡萄だな。ちゃんとここで息づいてくれたんだ」

 初めて小さく開いたその葉を見つけた時、蒼生は感動したように声を出していた。

「蒼生さんと私と一緒です。ここで根づいて葉を広げ、ともに支え合いながら、大きく成長していくんです」

 陽菜美の声に蒼生はゆっくりとうなずく。

「そうだな。陽菜美の言う通りだ」

 蒼生は陽菜美をぎゅっと抱きしめると、二人はいつまでもその瑞々しい黄緑の葉を眺めたのだ。
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