キスはボルドーに染めて
「失礼します」
目線を合わせずに頭を下げると、陽菜美はサッと身を翻そうとする。
「陽菜美ちゃん、まって」
すると貴志が軽く陽菜美の腕を取った。
陽菜美は、はっと息を止めると顔を上げる。
この人に触れられることに、まだどこかで身体が反応してしまう自分がいることを、嫌というほど思い知らされる。
――完全に吹っ切れてないんだ……。
でもそんな陽菜美とは対照的に、貴志は周りを気にするようにチラチラと目線を泳がせながら小さく口を開く。
「あのさ、陽菜美ちゃんのマンションに置いてる俺の荷物って……」
その言葉を聞いた瞬間、感傷に浸っていた陽菜美の脳内は、一気に逆回転へと回りだした。
――あぁそうか、やっと理解した。この男は自分のことしか考えていない、本気のクズ野郎だ。
――こんな男に、少しでも情を持った自分がすべて悪い。私の一生の汚点だ。
陽菜美はすっかり乾いた瞳を上げると、キッと貴志を睨みつける。
「わかりました、松岡主任。荷物は全て廃棄させていただきます。それとも、奥様宛に熨斗つけてお送りすればよろしいですか?」
目線を合わせずに頭を下げると、陽菜美はサッと身を翻そうとする。
「陽菜美ちゃん、まって」
すると貴志が軽く陽菜美の腕を取った。
陽菜美は、はっと息を止めると顔を上げる。
この人に触れられることに、まだどこかで身体が反応してしまう自分がいることを、嫌というほど思い知らされる。
――完全に吹っ切れてないんだ……。
でもそんな陽菜美とは対照的に、貴志は周りを気にするようにチラチラと目線を泳がせながら小さく口を開く。
「あのさ、陽菜美ちゃんのマンションに置いてる俺の荷物って……」
その言葉を聞いた瞬間、感傷に浸っていた陽菜美の脳内は、一気に逆回転へと回りだした。
――あぁそうか、やっと理解した。この男は自分のことしか考えていない、本気のクズ野郎だ。
――こんな男に、少しでも情を持った自分がすべて悪い。私の一生の汚点だ。
陽菜美はすっかり乾いた瞳を上げると、キッと貴志を睨みつける。
「わかりました、松岡主任。荷物は全て廃棄させていただきます。それとも、奥様宛に熨斗つけてお送りすればよろしいですか?」