キスはボルドーに染めて
「陽菜美、こっちに来て」

 蒼生に手招きされ、陽菜美は画面を覗き込むように蒼生の隣に移動する。

「すごい資料ですね」

 まじまじと画面を覗いた陽菜美は、様々な分析結果が表示された資料に目を丸くした。

 さっきまで蒼生が難しい顔をしてパソコンを操作していたのは、この資料をまとめていたからだろう。


「これが顧客の年齢層のグラフで、こっちが購入単価……。それとこれがサイトのクリック率で……」

 蒼生は指さしながら、陽菜美でもわかるように資料を示していく。

 確かにこの資料を見ると、アプリ自体に不慣れな層も多く、診断で新しい商品を勧められても、すぐに購入に結びつくかは疑問だ。


「それと……」

 蒼生はそこまで言うと、ふと陽菜美を振り返って、ぴたりと口を閉ざす。

 大きくうなずきながら話を聞いていた陽菜美は、突然視界に蒼生の整った顔が映り込み、心臓をドキッとさせた。

「ど、どうしたん……ですか?」

 陽菜美がドギマギと声を出すと、蒼生はさらに顔を近づける。
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