キスはボルドーに染めて
 でもその手は軽く蒼生にかわされて、逆にぎゅっと掴まれてしまった。

「陽菜美は、何と勘違いしたんだ?」

 蒼生はわざとらしくそう言うと、やけに整った顔を覗き込ませる。


 ――こ、この顔、ズルすぎる……。


 蒼生の悪戯っぽさを含んだ瞳の破壊力は、いつもの何倍も魅惑的だ。

 間近で顔を覗き込まれ、陽菜美の勢いは途端にひるんでしまう。

 するとそんな陽菜美の様子ににやりとすると、蒼生が指先のゴマをポイっと口に入れた。


「ちょ、ちょっと……! 何してるんですか!?」

 陽菜美は思わず叫び声を上げると、勢いよく蒼生の胸元に飛びかかる。

「お、おい……陽菜美、危な……い」

 その瞬間、バランスを崩した蒼生と一緒に、陽菜美はソファにドサッと倒れ込んでしまった。

 ドシンという衝撃に、思わず目をぎゅっと閉じる。

 でも次の瞬間、はっと目を開けた陽菜美は、蒼生にきつく抱きしめられている状況に気がついた。

 きっと蒼生は、陽菜美が怪我をしないように守ってくれたのだろう。

 陽菜美の頭や腰は、蒼生の長い腕に包まれていた。
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