キスはボルドーに染めて
 蒼生は「よし」とハンドルを握り直すと、ゆっくりとアクセルを踏んだ。

 蒼生は車を走らせながら、もう一度企画案を振り返る。

 確かに診断アプリも悪い案ではないが、よりOTOWineの顧客層にマッチした企画が必要だ。

 そのためにWEBサイトの分析をしてみて見えてきたことがある。

 その情報を集めるために、今から蒼生は音羽商事で人と会う約束を入れていた。


 OTOWineと同じく、OTOWAホールディングスの子会社である音羽商事が入るビルは、車で20分程度の場所にある。

 しばらく車を走らせた蒼生は、近くのパーキングに車を停めると、高層ビルが立ち並ぶ通りを歩いた。

 見慣れた景色を通り過ぎ、目的地に到着した蒼生は、ビルのエントランスに掲げられた文字を見て軽くふっと息を吐く。

 そこには音羽商事と並んで、OTOWAホールディングスの社名が掲げられている。

 蒼生も以前はここに出社していた。


 ――ここに来るのは三年ぶりか……。


 蒼生は顔を上げると、驚いたように自分を見る社員の視線を感じながら、音羽商事の受付に向かう。
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