キスはボルドーに染めて
「それがあのシャトーのワインだったのか?」

 驚いたような蒼生の声に、陽菜美はにっこりとほほ笑むと、大きくうなずく。

「父の夢だったそうなんです。大人になった私と一緒に、生まれた年のワインを飲むことが……」

「それで、20歳の誕生日だったのか……」

「えぇ。その時、父が言ってたんです。一緒にこのワインが飲めるってことは、陽菜美が立派な大人になった証なんだよって」

「素敵な話だな。陽菜美を育て上げたからこその、父親の言葉だ……」

 蒼生の優しい声に、陽菜美ははにかんだようにほほ笑んだ。


「でも後から聞いたんですけど、すごく手に入れるのが大変だったみたいで。しかも目が飛び出るほど、高かったって笑ってました」

 くすくすと肩を揺らす陽菜美の前で、蒼生は何かを考えるようにじっと腕を組んでいる。

「だから企画にできないかなって思ったんですけど……。難しいですね……」

 小さく息をついた陽菜美の前で、蒼生がおもむろに顔を上げた。

「そんなことはないよ」

「え?」

蒼生は立ち上がると、陽菜美の前にぐっと顔を寄せる。
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