もう一人の私に出会った夏
幸太は頭を押さえながら、そっと目を開けた。

「……千歳、大丈夫だったかな。」

「あっ……」

父は立て膝をついた。


「千歳は二階か?」

「うん。」

「俺、見てくるからみんなはここにいろよ。」

「え?」

幸太は頭を上げようとして、テーブルにぶつけた

「幸太、ここは任せたぞ。」

「……あい。」

幸太は頭を撫でながら言った。

父は壁に手を付きながら、階段を昇った。

「千歳!どこだ!」

二階の部屋が見えたところで、千歳は頭を押さえて、小さくなっていた。

「千歳!」

父は急いで、娘の側に駆けつけた。

「パパ!」

千歳は父にしがみついた。

「こ、怖かったよ~」

「大丈夫だから。さあ、今のうちに下へ行こう。」

父が階段の方を向いた時だった。

また地震が来た。

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