もう一人の私に出会った夏
「キャアアア。」

父は千歳の背中に、覆いかぶさった。

さっきよりも小さく、揺れはすぐおさまった。

「千歳……」

「パパ?」

千歳が父の身体の下から出ると、父は痛そうに背中を丸めていた。

「どうしたの?パパ。」

「……なんか、背中に落ちてきた。」

千歳が周りを見ると、近くに目覚まし時計が、転がっていた。

「お兄ちゃんの目覚まし時計だ。」

「幸太の?」

父は現物を見ると、ますます痛みが増したようだ。

「そういう物は、カバンの中にしまっておけよな~。」

「ごめんなさい。時計ないから、みんなが見えるように、高い場所に置いてたの。」

父の背中の痛みは、まだ続いてるようだった。


しばらく戻ってくる様子がない事に、心配になって三人とも二階へ昇ってきた。

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