もう一人の私に出会った夏
「あ、ママ。」

「どうしたの?宗ちゃん。」

母は真っ先に、うずくまっている父の側に寄った。

「……時計が背中直撃。」

「え!!」

千歳は幸太を見た。

「この時計……」

「あ、俺の!」

この時計が落ちて、背中に落ちたとなると、相当な痛みだ。

「うわ~痛そう!」

幸太は、自分が痛い思いをしたわけではないのに、自分の腕を摩った。

「骨、折れてる?」

純太は父の服を、後ろから捲った。

見ると背中には、大きな青いアザが付いていた。

「これは痛いわ~。」

母も思わず、目を細めた。


「痛~。」

父は不自然に、立ち上がった。

「宗ちゃん、つかまって。」

父は母の肩につかまって、階段を降りて行った。

「時計……これからは、畳の上に置こうぜ。」

幸太が時計を持ちながら言った。

「うん……」

千歳は気のない返事をして、また畳の上の寝転んでしまった。

「おい、千歳。」

千歳は、友達の事が気になって、目の前にいる家族のことを考えられなくなっていた。

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