もう一人の私に出会った夏

2、女の子

夕方になった頃、純太は庭の大きな木に走って行った。

「あ、クワガタ!」

「よく知ってるな、純太。」

「でも本物を見るのは初めて。図鑑でしか見たことない!」

「そうか。じゃあ、捕まえるか!」

父も純太の後を追いかけた。


「俺が小さい時は、けっこう見かけたな。」

父は一匹捕まえて言った。

「え~、いつの時代の人よ。」

「悪かったな、田舎育ちで。」

36歳になる父と母は、子供たちの前でも仲が良かった。

まだ若いせいか、よく子供たちと一緒に遊んでくれた。

「あ、あっちに大きいのがいる!」

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