もう一人の私に出会った夏
「はあ?なんで俺?」

幸太は、思いもよらぬ濡れ衣に、顔をしかめた。

「千歳は幸太と違って、繊細だからな。」

「今の千歳は、そうかもしれないけど、普段のアイツは繊細のせの字もないって。」

幸太と父の会話に、母も縁側に来た。

「確かにいつもの千歳は、何言われても気にしないって、感じだもんね。」

母は天井を見上げた。

「学校でなんかあったのかしら。」

母はずっと前から、千歳の事を気にしていた。


一方の純太は、まだクワガタを探していた。

「あれ~、ここいらへんにいたのにな。」

純太は草を別け、一本一本の木を見て回った。

「あ、いた!」

純太は背伸びをした。

「届かない……」

周りを見ると、大きな石があった。

「これに乗ろう。」

重かったが、純太は半分転がしながら、その石を木の隣まで持ってきた。

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