もう一人の私に出会った夏
「これで届くぞ。」

純太はその石に乗り、手を伸ばした。

「捕まえた!」

クワガタを取った途端、純太はバランスを崩した。

「あっ!」

倒れそうになった純太を、誰かが後ろから支えた。


「大丈夫?」

「ありがと……」

純太は振り返って、思わず叫んでしまった。

「あ!お姉ちゃん!」

「お姉ちゃん?」

聞き返された純太は、その女の子が姉ではない事に、気づいた。

だがよく似ている。

違うと分かっても、その女の子をじっと見つめてしまう。

女の子もじっと見られて、困っていた。


「私……顔に何かついてる?」

純太は首を横に振った。

「お姉ちゃん……僕のお姉ちゃんにそっくり……」

その女の子は、純太のその言葉を聞くと、にっこり笑った。

「僕は、名前なんて言うの?」

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