もう一人の私に出会った夏
「ああ……私もそろそろ帰るわよ。」

「そっか。もう帰っちゃうんだ。」

純太はまたじっと千早を見ると、自分が持っているクワガタを千早にあげた。

「はい、あげる。」

「いいの?」

「僕、もう一匹取ったから。」

「ありがとう……純太君。」

純太は一歩下がると、口を大きく広げて笑った。


「僕たち、これでお友達だね。」

「うん!お友達よ。」

「また会える?」

「うん!私、またこっちに遊びに来るよ。」

「約束だよ。」

純太は、千早に手を振った。

「うん、約束。」

千早も、純太に手を振った。


純太は名残惜しそうに後ろを向くと、家に向かって走り出した。

途中振り返ってみると、まだ自分のことを、見送っている。

「本当に、お姉ちゃんに似てたな。あの子。」


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