もう一人の私に出会った夏
「緋呂~。」

下を見ると、木の下にある広場で、女の子が手を振っている。

「千早。」

緋呂はひょいと飛ぶと、そのまま下まで降りた。

「おいおい、緋呂。」

水希も風羽も、緋呂に続いて下に降りた。

「あ、水希も風羽も来てたんだね。」

千早はうれしそうに笑った。


「いちゃ悪いかよ。」

「おい、水希。」

口の悪い水希に、緋呂が声を掛ける。

「ううん。水希もいたほうが楽しいよ。」

「じゃあ、特別にいてやる。」

千早は水希のその言葉に微笑んだ。


緋呂は千早の後ろに、石が倒れていることに気付いた。

「家、倒れてしまったな。」

千早は全く気にしてないようだ。

「いいのよ。もうすぐあの日が来るし。」

「けっ、水子になった日か?」

「水希!」

緋呂の言葉に、水希は顔を背けた。

「ごめんな、千早。」

「ううん。その通り。」

千早は水希に、にっこり笑った。


「そしたら、お父さんとお母さんが直してくれるよ。」

「そうか…」

千早の笑顔に、みんなもつられて笑顔になった。

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