もう一人の私に出会った夏
「もう一度、みんなでしようか。」

「もう一度?」

「みんな待ってる。さあ、行こう。」

父は千歳の腕をつかんだ。

「うん。」

千歳は父と一緒に、階段を降りた。


「なんだ、二階にいたの。」

母はほっとした顔をした。

「おまえ、心配させやがって。」

幸太は千歳に近づいた。

「千歳の荷物、持ってきてやったぞ。」

「ありがと……」

「さあ、おばあちゃんのところに行こう。」

父がそう言うと、改めて五人で、祖母の位牌の前に座った。

お線香も5人分あげ、みんなで手を合わせた。


「次は家の掃除だな。」

「え~」

「え~って言わない!宗ちゃん、雑巾。」

「ほ~い。」

雑巾を取りに行った父に幸太は、「自分が奥さんの尻に敷かれてるんじゃねえかよ。」と、さっきのお返し。

「幸太!」

「痛っ!」

幸太は母に頭を叩いた。

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