スターリーキューピッド
どうして黙っていたの。なんであんな余計なことしたんだよって、怒らなかったの。

私の性格を熟知している明吾からすると、この後に続くセリフはこれらだろう。

声を詰まらせる明吾に微笑み、再び口を開く。


「聞いた時は、なんて無茶なことしたんだって思ったよ。けど、いずれ私も、我慢の限界に達してたと思うから」


順番が違っただけ。先に私が歯向かったとしても、どっちみち、似たような結末を迎えてた。


「明吾のせいだなんて、思ってないよ」

「みづ……っ」

「私のこと、守ろうとしてくれてありがとう」


目を細めて伝えると、彼の目から一筋、涙がこぼれ落ちた。


「苦しい思いさせて、ごめんね」

「別に、美月の立場に比べたら、全然……っ」


バッグからポケットティッシュを取り出し、1枚渡す。


「けど正直、距離置こうって言われた時は、寂しかった」

「うん」

「俺のことを思っての発言だとわかってても、このまま離れていったらって考えて……怖かった」
< 133 / 136 >

この作品をシェア

pagetop