スターリーキューピッド
すると、明吾が無言で私の顔を見つめてきた。


「え、何? 顔にゴミでも付いてる?」

「ううん。……昨日、あんま寝れなかったの?」


寝不足を言い当てられ、口元が引きつるのを感じる。


「……私、そんなひどい顔してる?」

「いや。なんとなく、声に張りがないなーって思っただけ。調子悪いの? 病み上がり?」

「違う違う。新しいクラスに馴染めるかが心配で」


苦い笑みをこぼし、視線をアスファルトに落とす。

クラス替えが気になって仕方がない。ってのも本当ではあるのだけど……。


『実は僕、人間じゃないんです』

『本当は、水星から来た水星人なんです』


怪しいイケメンに遭遇して、早2週間。

未だに脳内に現れては、意味不明なセリフを何度も口にしてくる。


あの日、帰宅してすぐお母さんに知らせようとした。けど、言い出せなかった。

お尋ね者と話したってだけでも驚愕ものなのに、学校まで知られてしまった。その上転校してくるともなれば、同じ学区に住むことにもなる。

絶対心配するよな。そう考えたら、言葉が詰まっちゃって。

結局誰にも打ち明けられず……今日を迎えてしまった。
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