スターリーキューピッド
いきなり話を振られて間抜けな声が出た。


「ごめん、聞いてなかった。なんの話だった?」

「バレンタインのチョコ! 美月ちゃんは渡したことある?」

「あー……」


うん。お父さんと明吾に。毎年手作りクッキーを渡してるよ。

心の中ではすんなり返せるのに。四方八方から向けられる視線のせいで、上手く言葉が出てこない。

あぁもう、今更何を怖気づいてるんだ。

私と明吾が幼なじみだってことは、もうクラスのみんなには知られてちゃってるんだから。

正直に話したところで、別に何も──。


「あるよ。毎年作ってもらってる」


返答する声が聞こえて隣を見たら、明吾が自慢げに口角を上げていた。


「毎年!? 手作りなの!?」

「うん。美月、料理が得意だからさ。今年は猫の形のクッキーをもらったんだ」

「猫? 可愛い〜!」

「見た目も味も最高なんだよね。これはちゃんとしたお返しじゃなきゃダメだ! って思って、ホワイトデーには犬の形のチョコをあげた」

「そこは猫じゃないのかよっ!」


馬場くんのツッコミで周囲にどっと笑いが起こる。

助かった……。
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