アルトと北斗と水族館【アルトレコード】
「ほくとって水族館が好きなんだよね?」
「そうみたいだね」
 前に聞いたことがある。ひとりでふらっと行くこともあるというから、かなり好きなのだろう。先ほどの女性はそれを知っていたから水族館に誘ったに違いない。

「水族館って、魚がいっぱいいるんだよね。ぼくも行ってみたいなあ」
 目をきらきらさせるアルト。

「じゃあ、北斗さんにお願いしてみようか」
「やったあ! ほくともさそってみんなで行こ!」

「ダメよ、北斗さんは休みの予定がたたないくらいに忙しいのよ?」
 主席研究員は研究チームの指導をしつつ自分の研究をするのが普通だが、北斗さんはちょっと立ち位置が違う。アルトの研究をしつつ、いくつかの研究チームに相談役みたいに関わっていて、だからアルトのいるニュータイプ研究室とは別に自分の研究室も持っている。

「……さっきの北斗さんの話、信じてるんだ? あなたってけっこう純粋なのね」
「そ、そんなんじゃないけど」
 私はなんだか照れてしまった。純粋なんてこの歳で言われるとは思わなかった。

「でしょ! 先生って素敵なんだから!」
 なぜかアルトが大いばりして、私と秤さんは顔を見合わせて笑った。



 数日後、北斗さんの許可をもらった私はアルトと一緒に水族館へ行った。
 入ってすぐにあったのは南国の海を模した大水槽。水槽の上だけは天井がないので実際に外からの日差しが入っており、水がきらきらと輝いている。

「うわあ、すごーい!」
 端末の中のアルトは目を輝かせて水槽を見る。

「VR空間なら水中で魚を見ることだってできるのに」
 私が言うと、アルトは不満そうに首をふる。

「わかってないなあ。本物を見ることが大事なんだよ」
 大人みたいな口調に、私はつい笑みをこぼす。
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