アルトと北斗と水族館【アルトレコード】
 閉館時間までいろんなコーナーを見てまわり、私たちは大満足で水族館をあとにした。
「すごい良かった!」
 駅までの道のりで、アルトは興奮したように言う。

「だけど、ほくとも一緒ならよかったなあ」
 そういう彼の声は少し寂し気だ。
「そうね、仕事が忙しいみたいだから、当分は来られないかもね」

 現在は彼自身の研究に加え、他部署の研究も手伝っていると言う。それがひと段落するまではお出かけなんてできないだろう。もはや研究室に住んでいるも同然で、パーテーションで区切られた私室スペースには誰もいせさせないと言う。どれだけ部屋が乱れているのか、少し心配になった。

「ねえ先生、ほくとにも水族館の気分をあじあわせてあげたいなあ」
「それならVRかホログラムでなんとかできると思うけど……」

「そうじゃなくて! もっとリアル感がある感じで!」
「リアル感……?」
 CGで作られたVRよりリアルな感じを出したいってこと?

「3D映像で音や触感も同時に出して……って感じ? となるとやっぱりVRかな?」
 VRの作成は学生時代にかじったくらいで専門的にやったことはない。どうしたらいいのだろうか。

「そうじゃなくて、楽しかったっていうのをいっしょに感じたいの!」
 なんとなく、言わんとすることがわかって来た。今日の感動を北斗に伝えたいのだろう。
 北斗さんが楽しんでくれて、アルトも満足できる方法はあるのだろうか。

「どうすればいいか、一緒に考えようか」
「うん!」
 アルトは嬉しそうに元気よく返事をくれた。
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