婚前一夜でクールな御曹司の独占欲に火がついて~旦那様は熱情愛で政略妻を逃がさない~
長いまつ毛を伏せてテーブルに視線を落とす蘭の話は、幼少期から厳しく躾られてきた明季にも覚えのあるものだった。
だから真剣に、彼女の声に耳を傾けていたのだが。
「なので結婚前に一度くらい、火遊びをしてみたくて」
次に聞こえてきたセリフで、明季は硬直する。
……今、「火遊び」とか聞こえたが。
それはつまり読んで字のごとく火を使った遊びのことではなく、比喩としての――。
「……堂々と浮気宣言ですか」
引き攣りそうになる口を動かしてしぼり出したつぶやきに、蘭はあくまで落ち着いた態度のまま返す。
「いえ、浮気は私も抵抗があります。なので、副社長に協力をお願いしたくて」
「……協力とは、どんな」
「正式に結婚する前に、私と一度でいいので婚前交渉をしてくれませんか?」
無表情な彼女の口から出てきた衝撃的な単語に、今度こそ明季の思考は一瞬宇宙まで飛んだ。
(信じ難いけど、たしかに聞こえた。「婚前交渉」と言ったかこの人……)
もしかして『結婚するなら先に身体の相性を確かめておかないと』とか、そういうアレだろうか。
直前まで抱いていた清廉なイメージがガラガラと音をたてて崩れていく。それを察したように、蘭がまた右手を挙げた。
「あ、私は未経験です。そこはお間違えなく」
「……そうですか」
「突飛な提案だと、自分でもわかっているのです。でも、これくらいしか、思いつかなくて」
なんだかこめかみあたりが痛むような気がするが、目を泳がせる彼女の、次の言葉を待つ。
「少なくともうちの親族は、私があなたと結婚前に関係を持つだなんて思いもしていないでしょう。だから家を出る前に、少しだけ、今までの自分の殻を破って反抗してみたい。ただ、家族には言えない“ちょっと悪いこと”を、してみたいんです」
――その気持ちは、わからなくはない。
だから気づけば明季は、彼女の話を一笑に付すのではなく、真剣に聞いていた。
だから真剣に、彼女の声に耳を傾けていたのだが。
「なので結婚前に一度くらい、火遊びをしてみたくて」
次に聞こえてきたセリフで、明季は硬直する。
……今、「火遊び」とか聞こえたが。
それはつまり読んで字のごとく火を使った遊びのことではなく、比喩としての――。
「……堂々と浮気宣言ですか」
引き攣りそうになる口を動かしてしぼり出したつぶやきに、蘭はあくまで落ち着いた態度のまま返す。
「いえ、浮気は私も抵抗があります。なので、副社長に協力をお願いしたくて」
「……協力とは、どんな」
「正式に結婚する前に、私と一度でいいので婚前交渉をしてくれませんか?」
無表情な彼女の口から出てきた衝撃的な単語に、今度こそ明季の思考は一瞬宇宙まで飛んだ。
(信じ難いけど、たしかに聞こえた。「婚前交渉」と言ったかこの人……)
もしかして『結婚するなら先に身体の相性を確かめておかないと』とか、そういうアレだろうか。
直前まで抱いていた清廉なイメージがガラガラと音をたてて崩れていく。それを察したように、蘭がまた右手を挙げた。
「あ、私は未経験です。そこはお間違えなく」
「……そうですか」
「突飛な提案だと、自分でもわかっているのです。でも、これくらいしか、思いつかなくて」
なんだかこめかみあたりが痛むような気がするが、目を泳がせる彼女の、次の言葉を待つ。
「少なくともうちの親族は、私があなたと結婚前に関係を持つだなんて思いもしていないでしょう。だから家を出る前に、少しだけ、今までの自分の殻を破って反抗してみたい。ただ、家族には言えない“ちょっと悪いこと”を、してみたいんです」
――その気持ちは、わからなくはない。
だから気づけば明季は、彼女の話を一笑に付すのではなく、真剣に聞いていた。