繋いだ手、結んだ指先で。
始業式が終わったあとの帰り道で、亜希さんに電話をかける。
真昼間だし、授業中かもしれないと思いながら、何度かコール音が続いて諦めようとしたとき、電話が繋がった。
『結衣ちゃん! 久しぶり、元気にしてる?』
「亜希さん、お久しぶりです。元気です。ごめんなさい、わたし、ずっと連絡していなくて」
『いいのいいの! そんなの全然。結衣ちゃんの心の準備ができたときに連絡してもらえたらよかったから』
「用件、聞いてもいいですか?」
わたしが元気にしているかどうかの確認だけなら、早く折り返していたらよかったと思う。
何か用件があるのなら、それが北条くんに関係することなら、今はまだと遠ざけてきた。
受け入れる準備ができているかと言われたら、まだ緊張してしまうけれど、勇気を出して、返事を待つ。
『今度の土曜日、家においで。今ちょうど、桜とハナミズキが咲いてるんだ』
「え……あの、それ、だけ?」
『渡したいものがあるから会いたくて。外がよかったら別のところにするけど、できたら来てあげてほしいんだ』
桜とハナミズキが見えるのは北条くんの部屋だ。
そこに立ち入ることを考えると、どくっと心臓が跳ねる。
別の場所で会うことも提案してくれるけれど、花の咲く時期は今しかない。
北条くんの部屋で会うことを了承して、電話を切った。