繋いだ手、結んだ指先で。





土曜日の昼、家の前に止まった亜希さんの車に乗り込む。

歩いていくと言ったけれど、少し距離があることと北条くんの家の近くは坂道が多く大変だからと迎えに来てくれた。


後部座席に花が置いてあるのを見つける。

桃色の花弁が幾重にも重なる、バラのような花。


「あの花は?」
「ラナンキュラス」
「初めて聞きました」
「私も知らなかった」


あっけらかんと言う亜希さんは、花には詳しくないからと付け加える。


「理真は花が好きだから」
「……枯れるのは寂しいって言ってました」
「えっ! うそ、でも花の本がほしいってよく言ってたよ」
「少しでも長持ちするようにって、色々と調べて試してるって……」


いつか聞いたことを思い出しながら話すと、亜希さんは顔を青くして手を口元に置く。


「もしかして、気を遣ってたのかなあ? お母さんも私も花ばかり持っていってたから」
「あ、いや、それだけじゃないと思います。花のことを話すときはいつも楽しそうだったから」


好きじゃなかったら詳しくはならないと思う。

切り花よりも自然に咲く花が好き、とは言っていたから。


「なんかね、そんなことばっかりだよ。理真が亡くなってから、俊やお母さんたちと話していて、そうだったの? って知ることも多くてさ。あの子優しいから、嫌なことがあってもほとんど言わなかったんだろうね」
「わたしにもあったかな、いやなこと」
「結衣ちゃんには、好きなことだらけだと思うよ」


少しだけ不安になるわたしにあっさりと言い切って、亜希さんは自宅の駐車スペースに車を止める。

花とお茶の準備をしてくるからと先に北条くんの部屋に行くように言われて、随分と久しぶりに感じる廊下を歩く。

突き当たりの部屋を開けると、以前見たままの内装で、窓の外の景色だけが変わっていた。

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