繋いだ手、結んだ指先で。
◇
木曜日にカウンセリングの予約を入れていたことをすっかり忘れていて、授業の前に担任の先生に言われてすぐに保健室に向かった。
立川先生に声をかけてから相談室に入ると、カウンセラーの先生はすでにソファで待っていた。
「こんにちは、三瀬さん」
「こんにちは、遅れてすみません」
前回の面談から1ヶ月開いていることもあり、近況を話しながら、以前相談していた内容にも少しだけ触れられる。
主にはクラスメイトとの関係性のことだったけれど、特に困りごとはないと伝えるとそれ以上は深掘りされなかった。
山岸さんの話したときに周りにいたクラスメイトに、わたしに恋人がいるとかいないとかで噂を立てられたりしたけれど、根も葉もない噂は、当のわたしが関わらずにいたら、すぐに消えた。
「食欲がないのはどうしたのかな」
「暑いから、かな。最近はあんまり食べられなくて」
「三瀬さん、確か頭痛があるんだったね。その辺りも関係ありそう?」
面談の最初に毎回書くことになっている問診票のようなものの食欲の欄に、正直に【あまりない】と答えていた。
最近頭痛は落ち着いているけれど、そういうことにしておこうと頷く。
「気分が落ち込むとかはある?」
「……わからない」
ぼんやりとしてしまうのも、食欲不振も、ここのところあまり眠れないのも、原因はわかってる。
もやもやした気持ちをどうにかしたくてここに来たわけではなくて、何なら予約をしていたことも忘れていたくらいだ。
態度や言葉にはしながらも、相談はしようとしないわたしに、カウンセラーの先生も困ったように眉を下げていた。