繋いだ手、結んだ指先で。





翌日、放課後に保健室を訪れると、机でパソコンを打っていた立川先生が慌てて駆け寄ってくる。


「三瀬さんごめん、伝えられていなくて。今日は北条くん来ていないの」
「……え」
「体調が悪くて来られないとかではないから安心して」
「来週は来ますか?」
「それはまだ、何も言ってなかった」


体調不良ではないのに、ここ数ヶ月毎回来ていた日に休むことに、立川先生も妙だと思っているようだ。

先週のことが関係していることはすぐにわかって、つい俯いてしまうとすぐに立川先生がフォローを入れる。


「ずっと来ないことはないから! 気になるなら、連絡してみてもいいんじゃないかな。連絡先は知ってるでしょう?」
「……知らないんです」


聞こうと思って聞けないまま、わたしのスマホに北条くんの連絡先は入っていない。

あからさまに、しまったって顔をする立川先生には気にしないで、と伝えて、保健室を出ていく。


金曜日にこんなに早く帰るのは久しぶりだ。

毎週、北条くんと会っていたから。

毎日往復する通学路なのに足が重くて、ついには路傍で立ち尽くす。


もうすぐ7月になる。

立ち止まっていると暑くて、日差しを遮るものが何もないと、瞬く間に汗が浮かぶ。


青い空を見上げて、ぼんやりと考える。

北条くんと相談室で会うようになった4月はまだ寒くて、制服も長袖だった。

季節が変わっている。

北条くんが余命のことを立川先生に話していたのは、昨年の11月、秋のことだ。

冬になって、春になって、そして今、夏を迎えている。

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