繋いだ手、結んだ指先で。
◇
翌日、放課後に保健室を訪れると、机でパソコンを打っていた立川先生が慌てて駆け寄ってくる。
「三瀬さんごめん、伝えられていなくて。今日は北条くん来ていないの」
「……え」
「体調が悪くて来られないとかではないから安心して」
「来週は来ますか?」
「それはまだ、何も言ってなかった」
体調不良ではないのに、ここ数ヶ月毎回来ていた日に休むことに、立川先生も妙だと思っているようだ。
先週のことが関係していることはすぐにわかって、つい俯いてしまうとすぐに立川先生がフォローを入れる。
「ずっと来ないことはないから! 気になるなら、連絡してみてもいいんじゃないかな。連絡先は知ってるでしょう?」
「……知らないんです」
聞こうと思って聞けないまま、わたしのスマホに北条くんの連絡先は入っていない。
あからさまに、しまったって顔をする立川先生には気にしないで、と伝えて、保健室を出ていく。
金曜日にこんなに早く帰るのは久しぶりだ。
毎週、北条くんと会っていたから。
毎日往復する通学路なのに足が重くて、ついには路傍で立ち尽くす。
もうすぐ7月になる。
立ち止まっていると暑くて、日差しを遮るものが何もないと、瞬く間に汗が浮かぶ。
青い空を見上げて、ぼんやりと考える。
北条くんと相談室で会うようになった4月はまだ寒くて、制服も長袖だった。
季節が変わっている。
北条くんが余命のことを立川先生に話していたのは、昨年の11月、秋のことだ。
冬になって、春になって、そして今、夏を迎えている。