繋いだ手、結んだ指先で。
突き動かされるように走り出すけれど、目指す場所はわからなかった。
わたしは北条くんの連絡先を知らないし、学校に戻っても今日は北条くんは来ない。
家だって知らない。
幼馴染みだという遠藤くんを探そうにも、部活をしているのか帰宅部なのかもわからない。
「……そうだ、お姉さん」
住んでいる地区のことは何となく聞いたことがあったから、その方面に走りながら、ふと北条くんのお姉さんの連絡先は知っていることを思い出す。
鞄からスマホを出して、まだ一度もかけたことのない番号をタップする。
本当に、勝手なことをしていると思う。
北条くんを振り回して、周りの人を巻き込んで、自分の浅はかさが情けない。
それでも、北条くんに繋がる方法が、あるのなら。
『はい、北条です』
何度目かのコール音の後、電話は繋がった。
「あの、わたし、三瀬です」
『三瀬……もしかして、結衣ちゃん? ちょっと待ってね』
お姉さんの声以外にもざわざわとした音を拾っていて、言われた通りに待っていると、足音と物音が聞こえたあとに電話の向こうがしんと静かになる。
『今、大学にいるんだ。騒がしかったでしょ。それで、どうしたの?』
「え、ごめんなさい、授業中でしたか?」
『ううん、金曜日のこの時間はもう空いてるよ。いつもは理真の迎えに行ってる時間だし』
確かに、北条くんを毎週お迎えに来ているのはお姉さんだ。
今日はいつもと違うんだってことを改めて突きつけられて、ひゅっと吸った息の音が伝わってしまう。
『結衣ちゃん、大丈夫?』
気遣わしげな声に、電話越しには見えていないと知りながら、小さく頷く。