繋いだ手、結んだ指先で。


「ちょっともう、しっかりしなきゃね。結衣ちゃんの方がよっぽど大人よね」
「そんなことはないです。亜希さん、突然なのに迎えに来てもらって、ありがとうございます」


乗ってすぐに伝えるべきお礼を忘れていたことに気付いて、ぺこりと頭を下げる。

亜希さんは細い路地を右へ左へと抜けながら、気にしないで、と笑った。


「実はね、理真に話を聞くって言ったけど、あの子何も教えてくれなくて、この間何があったのか私は何も知らないの」


笑顔なのに、前を見据えるその横顔は寂しげだった。


北条くんが、わたしとのことなんてもういいと簡単に折り合いをつけられているのなら、それでもいい。

でもきっと、現実はそうではなくて、亜希さんに何も話していないのだとしたら、北条くんは今もひとりで抱えてる。

自分のことは、人に分けずに自分で何とかしなきゃって思うのに、北条くんが抱えているものは分けてほしいと思う。


「亜希さんに、聞きたいことがあるんです」
「なにかな?」
「わたしといるとき、北条くんは……」


辛くはないですか、と口にしかけて、言葉が少し違う気がして飲み込む。

北条くんの気持ちは北条くんにしかわからない。

亜希さんに聞きたいのは、周りから見て、北条くんがどんな顔をしているかだ。

わたしには、どうしても嬉しそうに、楽しそうにしか見えないから。

もしその奥底に別の気持ちが隠れていたとしても、わたしはそれに気付けていない。


しどろもどろになりながらも伝えると、亜希さんはきょとんとした顔で横目にわたしを見た。


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