繋いだ手、結んだ指先で。


「笑ってるよ、理真」
「……それは、わかります」
「幸せそうだよ。ずっと見てきたから、理真が心から楽しそうに結衣ちゃんと過ごして、嬉しそうに笑ってるってわかるよ」


亜希さんのその言葉には混じり気がなく、ずっとそばで見てきた家族の言うことだからこそ、すっと胸の中に入ってくる。

またじわっと涙が浮かびそうになって、慌ててお茶を飲んで誤魔化す。

それでもぐずっと鼻が鳴ってしまって、亜希さんに見られないように窓の外を見た。


いつの間にか車は住宅街を走っていて、坂道を上っていく。

やがて亜希さんが車を止めたのは、周りの家と比べても大きく立派な一軒家。

車のエンジンを切ったあと、亜希さんはすぐに車を降りずに、結衣ちゃん、とわたしの名前を呼んだ。


「亜希さん……?」
「私ね、ずっと会ってみたかったんだ。結衣ちゃんに」


何の話をしているのかわからずに首を傾げるけれど、そういえば亜希さんは初めて会ったときからわたしを知っている様子だった。


「小学生の頃の集合写真、一緒に写れない年もあったのに、もらってきたら理真はずっと眺めていて……誰を見てるの? って聞いたら、いつも同じ子を教えてくれるの」
「それって……」
「そう。結衣ちゃん。知らない子なのに毎年見てるから、勝手に感慨深くなっちゃって、もう中学生だもんね」


じっと顔を見られるのも、北条くんの癖と一緒だしと随分慣れてきたけれど、今の会話の後だと照れくさい。

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